〜なぜ動物の足は壊れにくいのに、人間だけトラブルが起きるのか?〜
牛・馬・羊・豚などの家畜と人間では、足の構造、とくに“距骨(きょこつ)”の役割がまったく違います。
この違いが、外反母趾・扁平足・足底筋膜炎など、人間だけが抱える足の問題を生み出す決定的な要因です。
■ 家畜の距骨は「固定型」
家畜化されてきた四足動物に共通しているのは、距骨がほとんどねじれない“固定パーツ”であることです。
四足動物は、すべて“蹄行(ていこう)”といって、かかとを地面につけず、つま先で立っています。いわば常にハイヒールで歩いているような状態です。
このため足首の角度は固定され、距骨は上下方向へのバネの役割に特化します。
- 速く走れる
- 長距離移動ができる
- 不安定な地面でも軸がブレない
家畜化の中で、“効率のよい歩き方・走り方”が求められ、それに適した骨格へと固定化が進んだと言えます。結果として四足動物は、距骨がほぼ動かないため壊れにくい構造になりました。
■ 一方、人間の距骨は「多自由度の可動型」
人間の距骨の特徴は、四足動物と完全に逆で、三次元方向に動く“可動パーツ”であることです。
- 内側に倒れる(回内)
- 外側に起きる(回外)
- 軽くねじれる(回旋)
これらの複雑な動きが衝撃を吸収し、膝・腰・体幹へ伝わる負荷を和らげています。つまり距骨は、二足歩行におけるサスペンションの基部です。
さらに距骨は、人体で唯一「筋肉が付かない骨」。
姿勢や股関節の硬さ、靴の影響をそのまま受けやすく、わずかな歪みが全体に波及しやすいという弱点があります。
■ なぜ人の足だけ壊れやすいのか?
理由はシンプルで、
人間:可動型 → ズレる構造
動物:固定型 → ズレない構造
という進化の違いです。
四足動物は、
- 蹄行で足首が固定され
- 4本脚で重量を分散し
- ねじれのストレスがほぼゼロ
このため外反母趾や扁平足のようなトラブルが起きません。
人間は、
- 二足歩行で距骨に荷重が集中し
- ねじれ・回内・回外を頻繁に使い
- 靴の形状や生活習慣でバランスが狂い
結果として、距骨の位置がズレやすい=足が壊れやすいのです。
■ まとめ
家畜化された動物の距骨は、
「早く・遠くへ効率よく動くための固定型」。
人間の距骨は、
「衝撃を吸収しながら多方向に動くための可動型」。
この構造の違いが、
“動物は足が壊れにくいのに、なぜ人間だけ足トラブルが多いのか?”
という疑問の答えになります。
そしてこの“可動性”こそが、
距骨を整えると全身のバランスが一気に変わる理由でもあります。





