バレエ経験者から「ルルベがぐらつく」「プリエで膝が内に入る」「アラベスクで軸が決まらない」という相談をよく受けます。
(ルルベ、よく知っているでしょ?勉強しています)
これらは筋力や柔軟性の問題として捉えられがちですが、臨床的には 足の土台となる“距骨(きょこつ)”の位置異常 が大きく関与しています。
■距骨とは
足関節の中心に位置し、脛骨と踵骨をつなぐ「荷重とバランスの要」です。
この骨は筋肉が直接付着していないため、一度ズレると自力で戻しにくいという特徴があります。
■バレエにおける距骨の典型的な偏位
バレエ特有の動作である
- ターンアウト(外旋)
- ルルベ(つま先立ち)
- ポワント(つま先荷重)
を反復することで、距骨は次のように動きやすくなります。
| 動作特色 | 距骨偏位の傾向 | 臨床で見られる症状 |
|---|---|---|
| 過度な外旋・甲出し | 前外方へ滑り込む | ルルベが不安定、足首ブレる |
| つま先立ちで母趾球に過負荷 | 内側の支持低下 | 外反母趾、母趾MPの痛み |
| プリエでの荷重軌道が外寄り | 下腿の内旋制御が崩れる | 膝が内側へ流れる(X気味) |
→ つまり、ルルベが不安定なのは「筋力不足」ではなく「骨の土台がずれている状態」。
■ルルベ時の重心と足の積み上げ
正しいルルベは、以下の直線が成立しています。
耳 → 肩 → 体幹 → 骨盤 → 大腿 → 脛骨 → 距骨 → 母趾球
距骨が前外へずれていると、
- 母趾球に乗り切れない
- 第2趾〜小趾側に逃げる
- 足首周囲が過緊張
- アキレス腱周囲が硬くなる
という 代償パターン が出ます。
→ 見た目は「つま先で立っている」ようでも、荷重線は正中にありません。
■臨床で行うべき調整ポイント(再現性高い手順)
- 距骨の前外方偏位の整復
- 前距腓靭帯周囲の滑走改善
- 距骨ネックへの間接圧入力
- 荷重位での再教育が必須
- 足指内在筋の“握る”ではなく“寄せる”活性
- FHB(母趾内転筋群)の再教育
- 「床を押す」ではなく「足裏で吸いつく」
- 股関節外旋は“可動域”でなく“制御”に切り替える
- 大殿筋下部と深層外旋六筋の同時発火を誘導
- 足首から外旋を取らないことをフィードバック
■セルフワーク(患者指導用:短く・明確に)
- 三点支持
母趾球・小趾球・踵で床を感じる - 足指は“曲げる”ではなく“寄せる”
タオルギャザーはNG(アーチ潰れる) - ルルベは「上に立つ」ではなく「土台に立つ」
患者がこの3点を理解した瞬間、
ルルベは劇的に安定します。
■まとめ
- ルルベ不安定は筋力の問題ではない
- 原因は 距骨の前外方偏位と荷重線の逸脱
- 調整と再教育で バランスは即時に変わる
- バレエ経験者は理解と吸収が早く、施術効果が出やすい層





