ポダイアトリスト(Podiatrist)は、足や足首、下肢全般の疾患・障害を専門的に診療する医療資格を持つ医師のことです。特にアメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリアなどで制度が確立されており、糖尿病性足病変、外反母趾、扁平足、足底腱膜炎、巻き爪、スポーツ障害など幅広い足の問題に対応します。
ポダイアトリストの特徴と役割
ポダイアトリストは、一般の整形外科医とは異なり、足と足首に特化した専門的なトレーニングを受けた医師です。以下のような役割を担います。
1. 足と足首の診断・治療
- 骨・関節の問題(外反母趾、偏平足、足根管症候群など)
- 筋肉・腱・靭帯の問題(アキレス腱炎、足底腱膜炎など)
- 皮膚・爪の疾患(巻き爪、ウオノメ、タコ、水虫など)
- 神経の問題(足根管症候群、モートン神経腫など)
- 血流障害・糖尿病合併症(糖尿病性足潰瘍、血行障害)
2. 足の手術
- 外反母趾や骨折の矯正手術
- 巻き爪の手術
- 腱・靭帯の修復手術
3. 足のリハビリ・装具療法
- オーソティックス(Orthotics):患者の足の形状に合わせたインソールを処方
- 物理療法(PT):ストレッチ、筋力トレーニング、電気刺激療法
- 靴のカスタマイズ:足の疾患に適した靴の提案
4. スポーツ障害の予防と治療
- アスリートの足の評価と治療
- 足のバイオメカニクス分析(歩行分析)
- 運動パフォーマンス向上のための指導
国別のポダイアトリストの制度
アメリカ(米国)
- **「Doctor of Podiatric Medicine(DPM)」**の学位を取得し、**ポダイアトリー医学部(Podiatric Medical School)**で4年間の専門教育を受ける。
- その後、病院での研修(Residency)を3年間行い、資格を取得。
- 一般的な整形外科医とは別のルートで足専門の医師になる。
- 外科手術も可能で、足と足首に関する手術は整形外科医と同じくらいの技術を持つ。
イギリス
- **「Podiatrist」または「Chiropodist」**と呼ばれる。
- 大学で**ポダイアトリー学士号(BSc in Podiatry)**を取得し、国家資格を取得。
- 外科手術を行うためには追加の資格が必要。
オーストラリア
- **ポダイアトリーの学士課程(Bachelor of Podiatry)**を修了する。
- 一部のポダイアトリストは追加の訓練を受けて「Podiatric Surgeon(足病外科医)」として手術を行う資格を得る。
カナダ
- 一部の州ではアメリカの「DPM」資格を持つポダイアトリストが診療可能。
- 他の州では「Chiropodist(カイロポディスト)」と呼ばれる専門職が足の治療を行う。
日本
- ポダイアトリストの国家資格は存在しない。
- 足の疾患は整形外科医や皮膚科医が担当するが、アメリカのように「足専門の医師」として独立した資格はない。
- ただし、最近では足専門のクリニックや足病学を学ぶ医師・理学療法士・整体師が増加している。
日本におけるポダイアトリストの必要性
日本では糖尿病患者の増加に伴い糖尿病性足病変(フットケア)の重要性が高まっています。欧米ではポダイアトリストが糖尿病足潰瘍の管理を担当することが多いですが、日本ではこの役割を整形外科、皮膚科、形成外科、内科医が分担しています。
また、外反母趾や足底腱膜炎の治療、インソール処方など、欧米ではポダイアトリストが行う分野を日本では整形外科医や整体師、理学療法士が担当するケースが多いです。
ポダイアトリストが日本でも導入されれば、足専門の医療が確立され、外反母趾や扁平足などの早期介入が可能になると期待されています。
まとめ
- **ポダイアトリスト(Podiatrist)**は、足と足首の疾患を専門とする医師で、米国やイギリス、オーストラリアで制度が確立。
- 手術・インソール処方・リハビリ・スポーツ障害管理など幅広く対応。
- アメリカでは「DPM(Doctor of Podiatric Medicine)」の資格が必要で、手術も行うことができる。
- 日本にはまだポダイアトリストの資格制度はないが、今後の導入が望まれる。
日本でも「足専門医」がより活躍できる体制が整えば、外反母趾や糖尿病足病変、スポーツ障害などの専門的な治療がよりスムーズに提供できる可能性があります!