整体の仕事をしていると、
「体は記憶している」
という言葉を実感する瞬間が何度もあります。
筋肉の硬さ、呼吸の浅さ、立ち方や歩き方。
それらは単なるクセではなく、
その人がこれまでどんな環境で、どんな感情で生きてきたか
が、静かに刻まれた結果だと感じます。
そんなことを考えていたとき、
ふと思い出したのが、わが家のクリスマスの記憶でした。
２歳までの記憶は、意外と深く残る
「どうせ覚えていないから」
そう言って、幼少期のイベントを軽く済ませてしまう大人は少なくありません。
でも、これは半分正解で、半分間違いです。
確かに
・何をもらったか
・どんな言葉を言われたか
といった言語化できる記憶は残りにくい。
一方で
・安心していた
・楽しかった
・守られていた
という感情の記憶は、驚くほど長く体に残ります。
これは医学的にも、自律神経や情動記憶の観点から説明できますが、
現場にいる人間としては、理屈以上に「体で感じる事実」です。
サンタの正体より、空気が残る
わが家では、子どもが２歳くらいまでの間、
父親である私がサンタの格好をして、
直接プレゼントを渡していました。
今、小学３年生になった息子は、
そのことを今でも覚えています。
しかも、
「お父さんがサンタだったかもしれない」
ではなく、
「サンタは本当に来た」
という記憶として残っている。
これはとても重要なポイントです。
子どもは、
事実よりも
その場の空気・安心感・大人の本気度
を丸ごと記憶します。
だから、正体がどうだったかは問題ではありません。
良い施術は、記憶を上書きする
整体でも同じです。
ただ筋肉を緩めるだけの施術は、
その場では楽になりますが、
体の記憶はあまり変わりません。
一方で、
・安心できた
・呼吸が自然に深くなった
・「任せていい」と感じた
こうした体験がある施術は、
体の記憶そのものを書き換えます。
私はよく
「施術とは、体に安全だと教えること」
だと考えています。
サンタの記憶も、まさにそれです。
サンタは最高の“非言語施術”
サンタは何も説明しません。
理屈も言いません。
説得もしません。
ただ、
・現れて
・渡して
・去る
それだけです。
でもその体験は、
「この世界は安全だ」
「自分は大切にされている」
という深い非言語メッセージを、
子どもの体に直接刻みます。
これほど完成度の高い施術は、
正直なかなかありません。
大人になってから効いてくる
興味深いのは、
こうした幼少期の記憶は、
大人になってから効いてくるという点です。
・初対面の人に対する警戒心
・緊張しやすさ
・失敗への恐怖
・人に頼れるかどうか
こうしたものの土台は、
幼少期の「安全だった記憶」によって大きく左右されます。
整体で体を緩めながら、
「この人、昔は相当頑張ってたんだろうな」
と感じる方は少なくありません。
逆に、
安心の記憶がある体は、
回復が早い。
これは経験則として、かなり確信しています。
完璧な親である必要はない
誤解してほしくないのは、
「完璧な演出をしなければいけない」
という話ではない、ということです。
サンタの衣装が安物でもいい。
演技が下手でもいい。
むしろ、ちょっと不格好な方がいい。
大切なのは、
「本気でやった」という事実です。
その本気は、
必ず空気として伝わります。
サンタは、未来への投資
サンタは、
一晩で終わるイベントではありません。
それは
・安心感への投資
・回復力への投資
・信じる力への投資
そして何より、
記憶に残る最高の施術です。
もし、２歳までの子どもがいるなら、
今年だけでも、
来年だけでも、
お父さんがサンタになってみてください。
その施術は、
何十年後かに、
きっと効いてきます。
